投資信託でよく見かける「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」ですが、為替ヘッジについて正しく理解できていない人もいるのではないでしょうか。
為替ヘッジは上手く活用すれば為替リスクの心配なく安定した収益が見込めることもあり、正しく理解して効果的なタイミングで取り入れるとより幅のある取引が可能となります。
そこで、今回は為替ヘッジの概要や、実際に為替ヘッジの使い方を具体的に解説します。
為替ヘッジとは?
為替ヘッジとは、為替変動による影響(為替リスク)を抑える仕組みのことです。
外国株式を始めとした外貨の金融資産は為替変動により、損失が増えて利益を上回ってしまうことがあります。
この損失リスクを回避するのに有効なのが、為替ヘッジです。
実際に「1株100ドルの外国株式を100株」購入することを想定してみます。
例えば、1ドル=130円のとき、購入にかかる費用は130万となります。
仮に1年後に1株あたり100ドル→110ドルに値上がりした場合を見てみましょう。
もし1ドル=130円のままなら資産価値は143万円となり、購入費から考えると1年で13万円分の利益が出ることになります。
ただし、実際は1年後も為替相場(1ドル当たりの価格)がそのまま同じということはほぼありえません。
為替変動ヘッジの使い方
では為替変動による資産価値を守るために、為替ヘッジがどのように使われるか確認しましょう。
実際に為替相場が変わることで、利益にも大きな影響を与えます。
例えば、以下のように外国株の為替相場が変化したと仮定しましょう。
為替 | 130円 | 100円 | 110円 | 150円 |
株価 | 100ドル | 120ドル | 120ドル | 120ドル |
資産価値 | 130万円 | 120万円 | 132万円 | 180万円 |
株価が仮に100ドルから120ドルと価値が値上がりしても、為替が130円から100円と円高になることで利益分が減少するのがわかります。
為替相場の損益分岐はおよそ1ドル=109円よりも円高に近づくと、為替変動の損失が株の利益を上回ってしまいます。
為替相場が動くことを防ぐために、為替ヘッジを実際に利用してみましょう。
このケースの場合、1ドル=130円のときに100株の株式を購入するときに、FXで株式の購入額と同額130万円分の1万ドル(1万ドル×130円=130万円)の売りポジションを建てるのです。
FXのポジションは株を売るまで保持し、1株120ドルに上がって株式を売却するタイミングで決済します。
このときの株式とFXの損益は以下の通りになります。
為替 | 130円 | 100円 | 110円 | 150円 |
株価 | 100ドル | 120ドル | 120ドル | 120ドル |
資産価値 | 130万円 | 120万円 | 132万円 | 180万円 |
株式の損益 | -10万円 | +2万円 | +50万円 |
為替の損益 | +30万円
(130円-100円) |
+20万円 (130円-110円) ×1万ドル |
-20万円
(130円-100円) |
トータル損益 | +20万円 | +22万円 | +30万円 |
つまり為替で円安・円高の影響が起きても、FXで「ドル売り円買い」の取引を同時に行うことで為替変動による影響が打ち消されています。
このように、為替ヘッジをすることで為替が急激に動いても利益を出すことが可能になります。
為替ヘッジするメリット
為替ヘッジすることによるメリットを見ていきましょう。
為替リスクを軽減できる
FXでは、通貨の価値が常に変動しているため大きな利益を得られる可能性がある一方で、大きな損失を被るリスクもあります。
そこで為替ヘッジを行うことで、こうしたリスクを軽減し損失を最小限に抑えることが可能になります。
例えば、将来の円安や円高に対するリスクを予測して逆方向のポジションを取ることで、価格変動の影響を抑えることが期待できます。
安定した収益を見込みやすい
2点目に為替ヘッジを利用することで、収入やコストが見込みやすくなるというメリットです。
FXでは利益がでている場合でも、為替レートが変動することで損失が出るリスクがありますが、為替ヘッジを利用すれば利益を確定しつつ将来的なレートの変動によるリスクを防ぐことができます。
為替ヘッジするときの注意点
FXで為替ヘッジするときの注意点についても確認しておきましょう。
スワップポイントがマイナスになる場合がある
FXではポジション保有中は毎日スワップポイントが発生しますが、スワップポイントがマイナスになるケースもある点には注意が必要です。
スワップポイントとは取引をするときの通貨の「金利差」のことです。
スワップポイントは低金利通貨で高金利通貨を購入する場合はプラスになる一方、高金利通貨を売って低金利通貨を買うポジションではマイナスになるのでコストを払うリスクが生じます。
そのため、FXで為替ヘッジを行う場合は、スワップポイントの支払い分も考えておく必要があるので覚えておきましょう。
ロスカットや追加証拠金が発生する場合がある
FXで為替ヘッジする場合、ロスカットや追加証拠金が必要になるケースがあります。
例えば、FXでポジションを維持する場合には、一定の証拠金維持率を保つ必要があるので注意が必要です。
証拠金維持率はFX会社によって異なるので、利用したい業者の証拠金維持率を確認して常に意識しておくことが重要です。
円安に動くと利益が小さくなる
FXで為替ヘッジする場合、円安に動いたときは利益が少なくなるので注意が必要です。
為替ヘッジを行うと、マイナスの影響の為替の損失は小さくなる分、プラスの影響がある為替でも利益が小さくなります。
リスクをとっても円安で大きな利益を狙いたい場合は、あえて為替ヘッジをせずに外国株式のみを購入することも戦略のひとつです。
為替ヘッジはあり・なし、どちらがおすすめ?
金融資産を選ぶとき、「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」が選べることがあります。
どちらを選べば良いか迷ったとき、状況によっておすすめの方法は異なります。
為替ヘッジありがおすすめなケース
為替ヘッジありの金融資産が適しているのは、以下のようなケースです。
為替ヘッジしたほうがよいのは、為替変動によるリスクを抑えたいときです。
リスクに関しては人によって許容度が異なるので、為替の動きが不安であれば為替ヘッジを利用すると良いでしょう。
為替ヘッジなしがおすすめなケース
為替ヘッジなしの金融資産が適しているのは、以下のようなケースです。
円安方向に動くと為替による利益が出やすくなるため、為替ヘッジなしのほうが向いています。
また、老後資金運用など長期的な運用を目的としている場合は、ヘッジコストを考慮すると為替ヘッジなしのほうが良いと言えるでしょう。
まとめ
今回は、為替ヘッジについての特徴や為替ヘッジの使い方について紹介しました。
為替ヘッジを効果的に利用することで、安定した収益が見込めるのが最大のメリットです。
ただし、為替ヘッジを利用することで円安の場合は利益が少なくなるというデメリットもあるため、タイミングによっては使わないほうがいいケースもあるので注意が必要です。
自分の投資スタイルに合わせて、為替ヘッジも効果的に活用してみてはいかがでしょうか。